前記事までは何度かに渡って、私の職業歴のうち証券会社のリテール営業に関するものについて見てきました。
私は、職種・ジョブチェンジを2回、転職を2回経験しています。
また、職歴や転職には直接関係していないかもしれませんが、税理士資格と宅建士資格、FPなどを有しており、資格試験の受験・合格経験もあります。
この資格試験や受験関係はまた今後ブログで触れていくとして、本日の記事からは私が過去に経験をした職種や職業などについて見ていきます。
これから就活される方や、転職を検討されている方などの一助となれれば幸いです。
ちなみに、私が最初に就職した業界は、金融業界の内資系証券会社でした。
そこで3年程度実務経験を積んだのち、製薬企業のMR職(医薬情報担当者、医薬情報を伝える営業)へ転職しました。
この記事では、製薬企業のMR職について確認していきます。
それでは、早速見ていきましょう。
このような方におすすめ
・これから転職活動を開始する予定の方
・転職活動に興味のある方
・製薬会社に関心のある方
・MR職に関心のある方
・営業職に興味のある方
など
結論:製薬会社・MR職への就職・転職は慎重に検討
よく検討する必要がある理由
それでは、早速ですが、結論から。
製薬企業のMR職(医薬情報担当者、医薬情報を伝える営業)への就職・転職はよく、情報を仕入れて検討することをおすすめします。
業界特有の問題点があるため、
よく熟考しましょう。
理由は以下のとおりです。
【よく検討する必要がある理由】
・新薬の開発が難しい
➢将来性が読みにくい
・毎年薬価改定があり、昔ほど国に守られない
➢製薬企業は儲かりにくくなっている?
・MR職の価値が年々薄れてきている
➢専門性のないMRは淘汰されていくかも?
以上です。
ただし、証券会社までとは言えませんが、製造業の中ではある程度給与水準が高い傾向にあるといえるでしょう。
そのため、ある程度高めの給与水準を期待しつつ営業職を希望される場合は、必ずと言っていいほど、MR職への就職・転職は1つの選択肢として持つべきです。
実際、転職を2回、職種(ジョブ)チェンジを2回してきた私から見てもそう言えます。
私が証券会社から製薬企業に転職するに当たって当時の転職エージェントからの以下のようにはっきりと言われました。
「ある程度の給与水準(証券会社の頃の水準)を維持しつつ営業職を希望するのであれば、メーカー(製造業)であると、MR職くらいしかご紹介できません!」
おそらく、10年ほど前の話ですが、今もその状況は大きくは変わらないでしょう。
新薬の開発が難しい
製薬企業への就職・転職を希望する上で知っておくべきことの1つとして、「新薬の開発が難しくなっている」点が挙げられます。
製薬企業は、新薬を開発して独占的に独占価格(薬価)で販売できるので、ある程度高い利益を稼ぎ出し、次なる新薬開発のための研究開発へその利益を投入する必要があります。
しかし、研究開発へ資金拠出したからといって簡単に新薬ができるわけではありません。
新薬開発の成功確率は20,000分の1ともいわれており、また、成功したとしても売れる薬となるとも限りません。
ましてや、資金力、利益水準の低い製薬企業は特に厳しいでしょう。
時代の進歩とともにゲノム解析や数理計算に基づく探索も進んでいるとのことですが、難しいことに変わりないでしょう。
毎年薬価改定があり、昔ほど国に守られない
上記で見たように、製薬企業にとって新薬開発は経営存続のための必須条件です。
他社からの導入品だけでは、いずれ厳しくなるのは目に見えています。
ただ、今までは新薬さえ開発できれば、国が決めた価格(いわゆる薬価)で独占的に販売でき、安定した経営を実現できました。
薬価改定は2年に1度でしたので、2年間は収益の見込みが立つ感じでした。
しかし、2021年度よりこの薬価改定が「2年に1度」から「毎年」に変更となりました。
それにより、仮に5%薬価が安くなると仮定すると、前年と同額を販売しているだけでは、売上高にして5%収入が減少することを意味します。
タダですら新薬開発が難化傾向にある中で非常に厳しい措置です。
MR職の価値が年々薄れてきている
そのように厳しさが増す製薬業界の中で、MR職はというと、製薬協による自主規制により添付文書に基づく根拠(エビデンス)なくセールスすることが難しくなっているみたいです。
そのため、極論をいうと、担当MRに聞かなくても事足りますし、他のクリニックの処方の感触や感想など追加情報のお伝えも難しくなっているとのことです。
つまり、私見ですが、MR職は医者や薬剤師にとって既に特別な存在ではなくなりつつあり、今後のコロナ禍の状況を鑑みると、本社のコールセンターなどに専門知識のある社員をおいて、外部からの問い合わせに回答することで事足りる可能性が出てくるかもしれません。
また、私が入社した頃には、医者への接待や自由に使える交際費もなくMR職のメリットもなくなってきていました。
接待もできず、添付文書以外の付加情報を伝達できないようなMRに対して、どれほど存在価値を感じてもらえるかは疑問です。
ただ、自社医薬品の適切使用情報を適確に伝えて社会貢献していきたいという志のある方は目指す価値がある職種ではないでしょうか。
製薬業界の動向
ある程度業界特有の問題点を見てきましたが、改めて製薬業界の動向から順を追って確認をしていきましょう。
業界動向を見る上で先ほどの内容とも被る部分もありますが、就職・転職を考える上で製薬業界特有の内容を確認することは欠かせません。
製薬業界の特有の内容といえば・・・
【製薬業界の特有の内容】
・薬価によりある程度売上が守られていること
・社会保障費圧縮のためGE(ジェネリック医薬品)が推奨されてきていること
・研究開発費の増大
・製薬協による自主規制拡大
このような独特な業界であることも就職・転職する前に念頭においておくと良いでしょう。
薬価によりある程度売上が守られていること
先ほど薬価改定が毎年となりましたと示しましたが、それでも他業界と比べて価格競争に巻き込まれる可能性は少なくなります。
とはいえ、昔あった護送船団方式のような手厚い国からの支援は、積み上がっている社会保障費を考えると今後はより一層期待しにくいでしょう。
私が転職した時はそのような毎年薬価改定がありませんでしたが、国策が変わる(毎年薬価改定の実施)と経営へのインパクトも大きいものとなります。
なので、社会保障費の抑制に伴う製薬業界へのしわ寄せがどの程度かも考慮しながら、就職・転職活動を進めていく必要がありますね!
社会保障費圧縮のためGE (ジェネリック医薬品)が 推奨されてきていること
次に、これまた、社会保障費圧縮の一環であるGE(ジェネリック医薬品)の推奨ですが、日本国内で普及率は70%(目標は80%)を超えてきているみたいです。
ただし、アメリカでは90%の普及率があるみたいですので、ここまで日本政府が目指すと追加の影響が製薬業界にも出てくるのは必至だと思われます。
そうなった場合、長い目で考えると資本増強できない弱小の製薬企業は厳しいかもしれないですね。
研究開発費の増大
こちらも製薬企業として、避けては通れない重要キーワードですね。
先ほどでも触れたとおり新薬の開発は20,000分の1程度です。
しかも開発したからといって利益がとれるかは未知数。
そのため、より効能・効果のある成分を見つけて薬にするために、各製薬企業は莫大な資金を投じて研究開発をしています。
今回は、製薬業界で話題のニュースがよくわかるサイトである「AnswersNews」の2021年5月24日の記事を一部引用します。
(引用:AnswersNews https://answers.ten-navi.com/pharmanews/21102/)
ご覧のとおり、エゲつない研究開発費です。
武田薬品工業で4,558億円、第一三共で2,274億円と続きます。
ということは、単純に将来に渡ってこの投資額以上(数倍程度の回収ができないとダメ)の利益を上げないことには経営している意味がありません。
なので、是が非でも研究開発を成功させないといけません。
ただ、先ほど確認したように新薬開発の成功確率は非常に低いため、かなりリスクの高い業界と言えるでしょうか。
また、個人的なイメージでは、まだまだ未開拓の分野であるオンコロジー(がん領域)に力を入れている企業の将来性は明るいのではないかと考えていますが、
弱にいうと、その領域に力を注げない企業の将来性は・・・。
ただ、日本ですと、小野薬品のオプジーボのように折角開発しても薬価を大幅に引き下げられることもあるので、何とも言えないのも事実ですね。
【「オプジーボ」の薬価変遷】
※100mg10ml1瓶で計算
・2014年9月薬価収載時
約730,000円
・2017年2月 緊急薬価改定
約3670,000円
・2018年4月 薬価改定
約280,000円
・2018年11月 再算定
約180,000円
・2021年8月 再算定
約160,000円
薬価収載時より7年で約79%の薬価ダウンです。半端ない影響ですね。
このように研究開発費のみならず薬価のダウン幅も増大傾向である点も考慮に入れて、製薬企業へ就職するか、転職するかを考えましょう!
製薬協による自主規制拡大
最後に、MR職の営業活動に直接影響する項目である、「製薬協による自主規制拡大」について確認しましょう。
私がMR職に従事していた頃から「製品名」の入ったボールペンやメモ用紙を得意先に配布することが禁止になったり、今では粗品の配布すらできないという話も聞きます。
さらに、当時は自社のSTUDY(研究)で自社製品の有効性を他社製品と比較しているパンフレットなどが普通にありましたが、現在では添付文書を用いた説明がメインという話も聞きます。
一度厳しくなった自主規制は基本的に緩む可能性は低いと思いますので、そうなるとこれからどれほどMR職を必要とされるかは疑問が残るところでしょう。
給与水準やルート・セールスに関心を示すだけでなく、幅広い視点で就職先・転職先として適しているか是非考えてみてください。
製薬企業について
続いては、製薬企業について確認します。
この製薬企業ですが、幅広い領域に自社医薬品を展開する汎用メーカーや特定領域に特化する専門メーカーに分かれます。
例えば、
【汎用メーカー】
・武田薬品工業
・第一三共
・アステラス製薬 など
【専門メーカー】
・ツムラ
・久光製薬 など
また、国内外で区分けすると、日本国内に拠点を置く内資系メーカーと海外に拠点を置く外資メーカーとがあります。
例えば、
【内資系メーカー】
・エーザイ
・大塚ホールディングス など
【外資系メーカー】
・メルク
・ノバルティス など
さらに、医者が処方せんを出す必要のある医療用医薬品とドラッグストアなどで販売される一般用医薬品、医療用医薬品の後発品のジェネリック医薬品などにも区別することができます。
例えば、
【医療用医薬品】
・中外製薬
・大日本住友製薬 など
【一般用医薬品】
・大正製薬
・佐藤製薬 など
【ジェネリック医薬品】
・東和薬品
・沢井製薬 など
これらの製薬企業ですが、現在の売上げはこのようになっています。
先にも引用しました、製薬業界で話題のニュースがよくわかるサイトである「AnswersNews」の2021年5月24日の記事を一部引用します。
(引用:AnswersNews https://answers.ten-navi.com/pharmanews/21102/)
1位は武田薬品工業、2位は大塚ホールディングスと続きます。武田はシャイアーを買収したこともあり、すさまじい売上高です。また、厳しい経営環境だと言われておりますが、営業利益率は15.9%と比較的高めの数字をたたき出していると思われます。
(引用:AnswersNews https://answers.ten-navi.com/pharmanews/21102/)
ただ、お気づきのように証券会社などと比べて比較的小粒の企業も含めると製薬企業は非常に多くの企業が存在します。
これからは今後の製品ラインナップを左右するパイプラインをいかに充実させていくかが生き残るための必須条件とされています。
そのため、資金力やパイプラインに乏しい企業は今後淘汰されていき、証券会社のようにある程度企業数も絞られていくのではないかと考えています。
また、日本国内の人口は減少傾向にあり、今後ますます加速すると言われています。
そのため、国内だけの売上高だけでの経営は厳しいため海外での売上高伸長も重要となります。
ところが、製薬企業の場合、圧倒的に外資メーカーの売上規模、研究開発規模が大きく内資系メーカーは苦戦を強いられているのが現状です。
つくづく思いますが、パイプラインの拡充なくして将来性はありません!
製薬企業への就職・転職を検討されている方は、この点を念頭に是非おいてくださいね!
その中で、製薬企業の営業職であるMR職はどのようになっていくのでしょうか?
MRについて
次に、MRについて見ていきましょう。
MRとは、Medical Representatives(医薬情報担当者)の略であり、製薬企業の営業職のことを指します。
このMRは、医師や薬剤師などの医療従事者に対して自社の医薬品に関する情報提供という活動を通じて、当該医薬品を販売しています。
厳密には、製薬企業がダイレクトに医療機関(病院やクリニック、薬局など)に直接販売(直販)するのではなく、卸店(スズケンやアルフレッサ)を通じて自社医薬品を販売しています。
MRは、証券会社の営業職などと異なり、新規開拓メインではなくルートセールスがメインです。
そのため、いかに得意先とのより良い関係構築をしていけるかが重要となります。
まとめ
製薬業界の動向から、製薬企業の現状などについて確認してきました。
最初に結論を述べましたが、「製薬企業・MR職への就職・転職は要検討」です。
絶対的におすすめできるわけではありませんが、給与水準や将来の可能性についてはまだまだ魅力的な部分もあります。
ですので、製薬企業への就職・転職を希望されている方は、業界の動向をウォッチしつつ、各製薬企業の現状のパイプラインなどを調べていきましょう。
次回の記事では、私の実体験に基づくMR職の内容や試験制度等について確認していきます。
ではでは。今日もありがとうございました!